御社の「デジタル金庫」は、数時間でこじ開けられます

~経営者が知るべき「12桁パスワード」というコストゼロの防衛策~

「ウチのような中小企業を狙うハッカーなんていないだろう」

もしそうお考えなら、その認識は経営上の大きなリスクになりつつあります。

昨今、大企業へのサイバー攻撃の足掛かりとして、セキュリティの甘い取引先(サプライチェーン)である中小企業が狙われるケースが急増しています。そして、その侵入経路として最も多く、かつ簡単に突破されているのが、従業員の「パスワード」です。

本記事では、なぜ従来の「8桁パスワード」が経営リスクなのか、そしてなぜ今「12桁以上」がビジネスの防衛ラインとして必須なのか、その根拠を解説します。

「8桁」のパスワードは、鍵がかかっていないのと同じ

攻撃者は、あなたの会社のIDとパスワードを手動で入力しているわけではありません。高性能なコンピュータと自動化ツールを使い、24時間休まずに「総当たり(ブルートフォース攻撃)」で正解を探り当てます。

以下の表は、攻撃者が一般的なハイスペックPCを用いた場合、パスワードの解読にどれくらいの時間がかかるかを示した目安です。

経営者が直視すべき「解読時間」の現実

(条件:英大文字・小文字・数字・記号をすべて混ぜた場合)

パスワードの桁数解読にかかる時間(目安)セキュリティ評価
8桁約8時間危険(一晩で突破されます)
10桁約5年注意(技術進歩により数年後は危険)
11桁約400年安全
12桁約3万年推奨(現在の技術では解読不能)
14桁約2億年強固

ご覧の通り、かつて標準とされていた**「8桁」は、わずか数時間で突破されます。**

従業員が退社し、翌朝出社するまでの間に、ランサムウェアへの感染や顧客情報の持ち出しが完了してしまう可能性があるのです。

なぜ「12桁以上」を推奨するのか

経営的な観点から「12桁以上」を推奨する理由は以下の3点です。

  1. 実質的な「解読不可能」領域への到達12桁に設定することで、解読時間は数時間から「数万年」へと跳ね上がります。攻撃者にとって、あなたの会社を攻撃することは「時間とコストが見合わない」行為となり、攻撃対象から外れる確率が高まります。
  2. 将来的な技術進歩への「保険」コンピュータの処理能力は年々向上しています。現在の「10桁(5年で解読)」は、数年後には数ヶ月、数日で破られるようになるでしょう。12桁にしておけば、当面の間、システム改修なしで安全性を担保できます。
  3. コストゼロのセキュリティ対策高価なセキュリティソフトの導入には予算が必要ですが、社内のパスワード規定(ポリシー)を「12桁以上」に変更することに、追加の費用はかかりません。

「覚えられない」という現場の不満を解消するために

「12桁なんて覚えられない」「業務効率が下がる」という現場からの反発は必ず起きます。

経営陣としては、以下の運用ルールをセットで導入し、従業員の負担を軽減しつつ安全性を高める指示を出してください。

  • パスフレーズの推奨意味のない文字列(例:H&3kL$9z)ではなく、単語を繋げる方式を推奨します。
    • 推奨例:Tokyo-Sales-Project-2025
    • これなら20文字を超え、かつ記憶しやすく、解読も極めて困難になります。
  • パスワードマネージャーの導入検討人間が記憶力で勝負する時代は終わりました。会社としてパスワード管理ツールを導入し、「覚える」負担をツールに任せるのも有効な投資です。
  • 多要素認証(MFA)の義務化クラウドサービス(メールやチャットなど)には、必ずスマホ認証などの「多要素認証」を設定させてください。万が一パスワードが漏れても、最後の砦となります。

結論:パスワードポリシーの変更は、最も安価なリスクヘッジである

情報漏洩による損害賠償や社会的信用の失墜は、中小企業の存続を揺るがします。

それに比べれば、「パスワードを12桁以上にする」というルール変更の手間は微々たるものです。

「当社のパスワード基準は、現代の脅威に対応できているか?」

ぜひ一度、社内のシステム担当者や総務責任者に確認し、規程の見直しを指示されることを強くお勧めします。

参考情報

前提条件:

  • 数字のみ: 0-9 (10通り)
  • 英小文字のみ: a-z (26通り)
  • 英大小文字+数字: a-z, A-Z, 0-9 (62通り)
  • 最強の組み合わせ: 英大小文字+数字+記号 (約90通り)
桁数数字のみ英小文字のみ英大小文字+数字最強の組み合わせ
8桁瞬時瞬時数時間約8時間
10桁瞬時数分数ヶ月約5年
11桁瞬時数時間約10年約400年
12桁瞬時数日約600年約3万年
14桁数秒数年約200万年約2億年