課税管理 (Tax Management) は、見積書や請求書を作成する際に適用される「税金(消費税など)」の種類と税率を管理する機能です。

日本の「消費税(10%)」や「軽減税率(8%)」はもちろん、海外取引におけるVAT(付加価値税)や、送料・手数料にかかる税金なども個別に設定できます。ここで正しく税率を設定しておくことで、ユーザーは計算ミスをすることなく、正確な金額の帳票を作成できるようになります。

1. 主な特徴

  • 複数税率の管理: 標準税率(10%)と軽減税率(8%)など、複数の税区分を登録して使い分けることができます。
  • 製品・サービス税: 商品価格に対してかかる税金を設定します。
  • 送料・手数料税: 商品代金とは別に、送料や手数料に対してかかる税金を設定できます。
  • 履歴管理: 税率変更(例:8%→10%)があった場合でも、過去の履歴を保持し、過去の請求書には当時の税率を適用させることができます。

2. 設定画面へのアクセス

  1. 画面右上の 歯車アイコン(Settings) > CRM Settings をクリックします。
  2. Inventory(在庫管理) > Tax Management(課税管理) をクリックします。

3. 設定手順

設定画面は「Product & Service Taxes(製品・サービス税)」と「Shipping & Handling Taxes(送料・手数料税)」の2つのタブ(またはセクション)に分かれています。

3.1. 製品・サービス税の追加 (Product & Service Taxes)

商品代金にかかる消費税などを設定します。

  1. + Add New Tax ボタンをクリックします。
  2. 以下の項目を入力します。
項目名説明
Tax Name税金の名称を入力します。(例:消費税、軽減税率)
Percentage税率を入力します。(例:10)
Retention「有効(チェックあり)」にしておくと、過去の税率として履歴保持されます(税率変更時に使用)。
※新規作成時は通常チェックなしでOKです。
  1. Save をクリックします。

3.2. 送料・手数料税の追加 (Shipping & Handling Taxes)

送料などにかかる税金を設定します(通常は製品税と同じ税率を設定します)。

  1. 画面下部(またはタブ)の Shipping & Handling Taxes セクションへ移動します。
  2. + Add New Tax ボタンをクリックします。
  3. 同様に名称(例:送料消費税)と税率(例:10%)を入力して保存します。

3.3. 税率の変更(増税時の対応)

税率が変わった場合(例:10% → 12%)、既存の税設定を編集します。

  1. 対象の税金の Edit(編集) アイコンをクリックします。
  2. Percentage を新しい税率に変更します。
  3. Retention(履歴保持)にチェックが入っていることを確認して保存します。
    • これにより、過去に作成済みの見積書は旧税率のまま維持され、これから作成する見積書には新税率が適用されます。

4. 計算モードについて(重要)

Vtigerの見積書や請求書には、税金の計算方法として以下の2つのモードがあります。

  • Individual(個別)モード:
    • 商品明細の1行ごとに税金を選択・計算します。
    • 「商品Aは10%」「商品Bは8%(軽減税率)」といった混在が可能です。
    • 推奨設定: 日本のインボイス制度や軽減税率に対応するには、このモードが適しています。
  • Group(グループ)モード:
    • 商品の合計金額に対して一括で税率をかけます。
    • 全ての商品が同じ税率である場合に適しています。

※このモード切替は、管理画面ではなく、各見積書・請求書の作成画面(Item Detailsブロック) で選択します。


5. 活用事例(レシピ)

事例1: 消費税(標準・軽減)の併用

  • 設定:
    • 税金A: 名称「消費税 (10%)」、税率 10
    • 税金B: 名称「軽減税率 (8%)」、税率 8
  • 運用: 見積書作成時に「Individual」モードを選択し、食品には「軽減税率」、それ以外には「消費税」を適用する。

事例2: 海外取引(免税)

  • 設定: 税金C: 名称「非課税 (0%)」、税率 0
  • 運用: 海外顧客への請求書では、すべての商品に対して「非課税」を適用する。

事例3: 税込価格での運用

  • 注意: Vtiger標準は「税抜価格」を入力して「税額」を外税で計算する仕様です。
  • 運用: 「内税」で運用したい場合は、税率を 0% に設定して運用するか、別途カスタマイズ(計算式の変更)が必要になる場合があります。

6. 機能イメージ図(ポンチ絵)

管理者が設定した「税率マスター」が、現場の「見積作成」でどのように計算されるかを図解しました。

graph TD
    ADMIN("👤 管理者")
    
    subgraph TAX_SETTING ["⚙️ 税率マスター設定"]
        TAX_10["🅰️ 標準税率: 10%"]
        TAX_08["🅱️ 軽減税率: 8%"]
        TAX_00["🆓 非課税: 0%"]
    end

    subgraph OPERATION ["📝 見積書作成 (ユーザー)"]
        ITEM1["商品A (1,000円)<br>👉 標準税率を選択"]
        ITEM2["商品B (2,000円)<br>👉 軽減税率を選択"]
    end
    
    subgraph CALC ["🧮 システム自動計算"]
        CALC1["商品A税額: 100円"]
        CALC2["商品B税額: 160円"]
        TOTAL["合計消費税: 260円"]
    end

    ADMIN --> TAX_SETTING
    TAX_SETTING -.-> OPERATION
    
    OPERATION --> CALC
    ITEM1 --> CALC1
    ITEM2 --> CALC2
    CALC1 & CALC2 --> TOTAL