定義リスト (Picklist Field Values) は、システム内のドロップダウンメニュー(選択肢)に表示される項目を管理する機能です。

「商談ステージ」「業界」「チケットの優先度」など、ユーザーがリストから値を選択するタイプのフィールドにおいて、**「どのような選択肢を表示するか」「どの役職(ロール)にどの選択肢を見せるか」**を制御します。選択肢を適切に管理することで、データ入力の揺れを防ぎ、正確なレポート集計が可能になります。

1. 主な特徴

  • 選択肢の編集: 新しい選択肢の追加、名称変更、削除、並び替えが可能です。
  • ロールごとの制御: 役職(Role)によって表示する選択肢を出し分けることができます(例:一般社員には「承認」ステータスを選ばせない)。
  • 色分け設定: 各選択肢に「色」を設定できます。これはカレンダーやカンバンビュー、チャートなどで使用されます。
  • 一括置換: 選択肢を削除する際、既存のデータに入っているその値を、別の値に一括で置き換えることができます。

2. 設定画面へのアクセス

  1. 画面右上の 歯車アイコン(Settings) > CRM Settings をクリックします。
  2. Configuration(構成) > Picklist Field Values(定義リスト / 選択リスト値) をクリックします。

3. 設定手順

3.1. 対象フィールドの選択

画面上部のドロップダウンで、編集したい場所を指定します。

  1. Select Module: モジュールを選択します。(例:Opportunities)
  2. Select Picklist in [Module]: 編集したいフィールドを選択します。(例:Sales Stage)

3.2. 選択肢の追加と編集 (Values)

リストには現在の選択肢一覧が表示されています。

  • 値の追加 (+ Add Value):
    • 新しい選択肢を入力します。
    • Assign to Role: この値を使用できるロール(役職)を指定します。「All Roles」を選べば全員が使えます。
  • 並び替え:
    • リストをドラッグ&ドロップして、ドロップダウン内での表示順を変更します。
  • 編集 (Edit):
    • 鉛筆アイコンをクリックし、名称を変更します。
    • Color: ここで色を指定すると、カレンダーや拡張機能(Progress Barなど)でその色が反映されます。
  • 削除 (Delete):
    • ゴミ箱アイコンをクリックします。
    • Replace with: 削除する値がすでに使われている場合、代わりにどの値をセットするかを指定します(必須)。

3.3. ロールごとの割り当て (Assign to Role)

「Values」タブの隣にある Assign to Role タブをクリックすると、ロール単位での細かい制御が可能です。

  1. 対象の Role を選択します(例:Sales Rep)。
  2. そのロールに見せたい選択肢だけを「Selected Values」側に移動させます。
  3. Save すると、そのロールのユーザーには、選ばれた選択肢しか表示されなくなります。

4. 活用事例(レシピ)

事例1: 商談ステージのカスタマイズ

  • 目的: 自社の営業プロセスに合わせて「内示」というステージを追加したい。
  • 操作:
    1. Opportunities > Sales Stage を選択。
    2. 「+ Add Value」で「内示」を追加。
    3. ドラッグして「見積提示」と「受注」の間に配置。
    4. Colorを「オレンジ」に設定して目立たせる。

事例2: 権限によるステータス制限

  • 目的: 「キャンセル」や「承認済み」へのステータス変更は、マネージャーだけに許可したい。
  • 操作:
    1. Assign to Role タブを開く。
    2. 「Sales Rep(一般担当者)」ロールを選択。
    3. 「Cancelled」と「Approved」を左側の「Available Values(利用不可)」に移動して保存。
  • 効果: 一般担当者のドロップダウンにはそれら表示されなくなり、勝手な変更を防止できます。

事例3: 古い選択肢の整理(データクレンジング)

  • 目的: 昔使っていた「キャンペーンA」というリードソースを廃止し、今後は「Webサイト」に統合したい。
  • 操作:
    1. Leads > Lead Source で「キャンペーンA」を削除。
    2. 削除時のポップアップ(Replace with)で「Webサイト」を選択。
  • 効果: 過去に「キャンペーンA」と登録されていたデータが、一瞬ですべて「Webサイト」に書き換わります。

5. 機能イメージ図(ポンチ絵)

管理者が選択肢(マスターデータ)を定義し、それをロールに応じてフィルタリングしてユーザーに提供する仕組みを図解しました。

graph TD
    ADMIN("👤 管理者")
    
    subgraph EDITOR ["📝 定義リスト設定"]
        ADD("➕ 値の追加<br>「A, B, C, D」")
        COLOR("🎨 色の設定<br>A=赤, B=青...")
        SORT("🔃 並び順の変更")
    end

    subgraph ASSIGN ["👮 ロール割り当て"]
        MGR_RULE("部長ロール:<br>全部OK (A, B, C, D)")
        STAFF_RULE("担当者ロール:<br>Dは禁止 (A, B, C)")
    end
    
    subgraph USER_VIEW ["ユーザーの画面"]
        MGR_DROP["部長のドロップダウン<br>[ A, B, C, D ]"]
        STAFF_DROP["担当者のドロップダウン<br>[ A, B, C ]"]
    end

    ADMIN --> EDITOR
    EDITOR --> ASSIGN
    
    ASSIGN --> MGR_RULE
    ASSIGN --> STAFF_RULE
    
    MGR_RULE --> MGR_DROP
    STAFF_RULE --> STAFF_DROP

    style EDITOR fill:#e3f2fd,stroke:#1565c0,stroke-width:2px
    style ASSIGN fill:#fff3e0,stroke:#ef6c00,stroke-width:2px
    style MGR_DROP fill:#ffffff,stroke:#333
    style STAFF_DROP fill:#ffffff,stroke:#333