はじめに
複数のメーカー製品を扱い、多くのお客様へ提案する機械商社(専門商社)の皆様。日々の業務でこんな「板挟み」の悩みを抱えていませんか?
- 見積作成の泥沼化: 仕入先(メーカー)ごとに掛け率が異なり、毎回Excelで利益計算をしてから見積書を作っているため時間がかかる。
- 受発注の紐付けミス: お客様から注文書(PO)をもらったのに、メーカーへの発注(PO)を忘れたり、型番を間違えて誤発注したりする。
- 納期回答の遅れ: 「あれ、いつ納品だっけ?」メーカーからの納期回答メールが埋もれ、お客様への回答が遅れてクレームになる。
- 価格改定の対応: メーカーの定価改定があるたびに、社内のExcel価格表を更新するのが追いつかない。
今回は、これら商社特有の「右から左へ」流す業務の複雑さを解消し、VtigerCRMとVTExperts拡張機能で利益と時間を生み出す仕組みをご提案します。
1. 全体像:機械商社向けCRMエコシステム
商社の役割は、単にモノを運ぶだけでなく、情報のハブになることです。
このシステムでは、メーカー(サプライヤー)からの製品情報・価格情報の管理と、顧客への提案・受注・納品を一気通貫で管理します。
業務プロセス連携イメージ
graph TD
subgraph 仕入先メーカー_Vendor
M[メーカーA社]
N[メーカーB社]
end
subgraph 商社内部_CRM
direction TB
DB1[(製品マスタ_原価)]
DB2[(顧客データベース)]
Proc1[引合_案件化]
Proc2[見積作成_利益シミュ]
Proc3[受注_発注同時処理]
Proc4[納期管理_検収]
end
subgraph 顧客_Customer
C[自動車部品工場]
D[食品加工工場]
end
%% フロー
C -->|引合依頼| Proc1
M -->|定価_仕切値| DB1
Proc1 -->|商品選定| Proc2
DB1 -.->|原価参照| Proc2
Proc2 -->|見積提出| C
C -->|注文書送付| Proc3
Proc3 -->|発注書自動生成| M
M -->|納期回答| Proc4
Proc4 -->|納入| C【図解】商社特有のデータ構造(ER図)
商社にとって最も重要なのは**「受注(SalesOrder)」と「発注(PurchaseOrder)」の紐付け**です。「お客様からこの注文をもらったから、メーカーにこれを発注した」というリンクをシステム上で確立します。
graph LR
%% ノード定義
classDef blue fill:#e3f2fd,stroke:#1565c0,stroke-width:2px;
classDef green fill:#e8f5e9,stroke:#2e7d32,stroke-width:2px;
classDef orange fill:#fff3e0,stroke:#ef6c00,stroke-width:2px;
classDef purple fill:#f3e5f5,stroke:#7b1fa2,stroke-width:2px;
subgraph 仕入サイド
Vendors(仕入先メーカー)
Products(取扱製品マスタ)
PriceBooks(仕切価格表)
PurchaseOrder(メーカーへの発注)
end
subgraph 販売サイド
Accounts(顧客企業)
Potentials(商談案件)
Quotes(顧客への見積)
SalesOrder(顧客からの受注)
end
%% リレーション
Vendors -->|供給| Products
Vendors -->|契約| PriceBooks
PriceBooks -.->|原価適用| Quotes
Accounts -->|依頼| Potentials
Potentials -->|作成| Quotes
Quotes -->|受注| SalesOrder
%% ★ここが商社のキモ
SalesOrder -->|バックトゥバック| PurchaseOrder
PurchaseOrder -->|発注送付| Vendors
%% スタイル
class Accounts,Potentials blue;
class Quotes,SalesOrder green;
class Vendors,PurchaseOrder orange;
class Products,PriceBooks purple;ポイント:
- SalesOrder(受注)⇔ PurchaseOrder(発注): 1つの受注データからボタン1つで発注データを作成。入力ミスを防ぎ、紐付けを保持します。
- PriceBooks(価格表): 「A社向け価格」「B社向け価格」あるいは「標準原価」「キャンペーン原価」など、複雑な価格体系をマスタ化します。
2. フェーズ別・課題解決シナリオ
フェーズ1:商品検索と選定(マルチベンダー対応)
【課題】 取り扱いメーカーが多すぎて、新人営業は「どのメーカーのどの製品が良いか」探すのに時間がかかる。カタログを探すだけで半日終わる。
★解決策:
- 統合製品データベース: 全メーカーの製品をCRMに登録。「耐熱」「防水」「小型」などのタグで検索すれば、メーカー横断で最適な製品を即座にピックアップできます。
- 原価・定価の可視化: 画面上で「定価」と「自社の仕入値」がひと目で分かるため、利益計算が瞬時に行えます。
フェーズ2:見積作成(利益確保)
【課題】 営業マンが勝手に値引きしてしまい、後で計算したら利益が出ていなかった(あるいは赤字)。Excel見積での計算ミスが多発。
★解決策:
- 利益率ロック機能: 「粗利15%以下では見積保存できない」といった承認ワークフローを設定。赤字受注をシステム的にブロックします。
- ドキュメントデザイナー (VTExperts): 異なるメーカーの製品を組み合わせた「一式見積」も、スペック表やカタログPDFを自動結合して、美しい提案書としてワンクリック出力できます。
フェーズ3:受発注業務(Back to Back)
【課題】 顧客からFAXやメールで注文書が届いた後、メーカーへの発注書作成を手入力で行っている。型番の転記ミスで、間違った商品が届いてしまった。
★解決策:
- 受注→発注の自動変換: 顧客からの「受注(SalesOrder)」を開き、「発注を作成」ボタンを押すだけで、内容をコピーした「発注(PurchaseOrder)」が生成されます。
- 宛先の自動切替: 複数のメーカー製品が混ざった注文の場合でも、メーカーごとに発注書を分割してPDF生成・メール送信が可能です。
フェーズ4:納期管理と納品
【課題】 「あの部品、まだ届かないの?」とお客様から電話が来て初めてメーカーに確認する後手後手の対応。
★解決策:
- 納期アラート: メーカーへの発注データに入力した「回答納期」が近づくと、担当者にリマインド通知。未着のリスクを事前に検知します。
- 分納管理: 「本体は先に納品、オプションは後日」といった分納ケースでも、ステータス管理で「何が未納か」を正確に把握できます。
【業務フロー】受注から発注までの自動化
sequenceDiagram
participant Customer as 顧客
participant Sales as 商社営業
participant System as Vtiger CRM
participant Maker as メーカー
Customer->>Sales: 注文書(PDF/FAX)送付
Sales->>System: 見積から「受注(SO)」へ変換
Note over System: ここで利益率最終チェック
Sales->>System: 「発注(PO)を作成」ボタン押下
System->>System: 受注内容をコピーして発注データ生成
Sales->>System: 発注書PDFプレビュー
System->>Maker: 発注書をメール自動送信
Maker-->>Sales: 納期回答
Sales->>System: 発注データに「納期」入力
System->>Sales: 納期遅れそうな場合にアラート3. 導入によるBefore/After
商社ビジネスの肝である「スピード」と「正確性」が劇的に向上します。
| 業務プロセス | 導入前 (Excel & 手入力) | 導入後 (Vtiger & VTExperts) |
| 商品知識 | カタログ棚から探す・メーカーに電話 | キーワード検索で即座に選定・原価も表示 |
| 見積・利益管理 | 電卓計算でミス多発・赤字受注リスク | 粗利自動計算&ロック・承認フロー適用 |
| 発注業務 | 受注内容を見ながら手入力で転記 | ワンクリックで受注→発注へ自動変換 |
| 誤発注 | 型番の入力ミスで返品トラブル | データ連携により転記ミスゼロへ |
| 納期回答 | 顧客から聞かれてから確認(受動的) | アラート機能で遅延予兆を検知(能動的) |
4. 最後に
機械商社にとって、在庫を持たずとも価値を出せるのは「提案力」と「調整力(デリバリー)」です。
しかし、事務処理に忙殺されていては、その本来の価値を発揮できません。
VtigerCRMで**「情報の一元化」と「事務処理の自動化」**を実現し、メーカーからも顧客からも頼られる「次世代の専門商社」へと変革しませんか?
「受発注の転記作業をなくしたい」「利益率をリアルタイムで見たい」という商社様は、ぜひVTExpertsの拡張機能を活用した構築をご検討ください。