はじめに

特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、デイサービスなどを運営する介護事業者の皆様。

「介護の質」を高めたいのに、以下のような「紙と電話」の業務に忙殺されていませんか?

  • 記録地獄: バイタル記録、食事摂取量、排泄記録… 毎日大量の手書き用紙に記入し、さらにPCへ転記している。
  • 家族への連絡不足: 「最近、母の様子はどうですか?」と聞かれても即答できず、慌てて日誌をひっくり返して確認している。
  • ケアマネ営業のブラックボックス化: どのケアマネジャーから紹介が多いのか、施設見学後の追客ができているのか、施設長しか把握していない。
  • 入居契約の煩雑さ: 重要事項説明書や契約書など、入居時の書類作成に時間がかかり、入居開始までのリードタイムが長い。

今回は、これら介護現場の「事務負担」を劇的に減らし、VtigerCRMと**VTExpertsの拡張機能(Mobile App等)**を活用して、スタッフが利用者様と向き合う時間を増やす方法をご提案します。

1. 全体像:介護・福祉向けCRMエコシステム

介護ビジネスにおいては、「利用者様」を中心としつつ、「ご家族」「ケアマネジャー(紹介元)」との信頼関係構築が重要です。

このシステムでは、見学予約の受付から、日々のケア記録、そしてご家族への定期報告までを一気通貫で管理します。

業務プロセス連携イメージ

graph TD
    subgraph 紹介_集客
        A[居宅介護支援事業所_ケアマネ] -->|利用者紹介| CRM((Vtiger CRM))
        B[Web_見学予約] -->|自動取込| CRM
    end

    subgraph 入居_契約管理
        CRM -->|空室管理| C[施設見学_面談]
        C -->|アセスメント| D[ケアプラン_契約書作成]
        D -->|電子サイン| CRM
    end

    subgraph 日々のケア_記録
        CRM -->|スマホ_ブラウザで記録| E[バイタル_食事_排泄]
        E -->|写真記録| F[レクの様子_傷の確認]
    end

    subgraph 報告_連携
        F -->|自動メール| G[ご家族へ月次報告]
        E -->|実績報告| H[ケアマネへ報告書]
    end

【図解】介護業界特有のデータ構造(ER図)

「利用者(Contacts)」を中心に、「ご家族」「ケアマネ」を紐付け、日々の「ケア記録(Service)」を蓄積していく構造です。

graph LR
    %% ノード定義
    classDef blue fill:#e3f2fd,stroke:#1565c0,stroke-width:2px;
    classDef green fill:#e8f5e9,stroke:#2e7d32,stroke-width:2px;
    classDef orange fill:#fff3e0,stroke:#ef6c00,stroke-width:2px;
    classDef red fill:#ffebee,stroke:#c62828,stroke-width:2px;

    subgraph 関係者
        CareManager(紹介元ケアマネ)
        Family(キーパーソン_ご家族)
    end

    subgraph 利用者情報
        Residents(利用者_入居者)
        CarePlan(ケアプラン_契約)
    end

    subgraph 営業_入居促進
        Inquiries(見学予約_空室待ち)
        Tours(施設見学履歴)
    end

    subgraph 現場記録
        DailyLogs(介護記録_バイタル)
        Incidents(ヒヤリハット_事故)
    end

    %% リレーション
    CareManager -->|紹介| Residents
    Family -->|保証人| Residents
    
    Residents -->|契約| CarePlan
    
    CareManager -.->|問い合わせ| Inquiries
    Family -.->|見学| Tours
    Inquiries -->|成約| Residents
    
    Residents -->|日々の記録| DailyLogs
    Residents -->|発生| Incidents
    
    DailyLogs -->|集計| CareManager

    %% スタイル
    class Residents,CarePlan blue;
    class CareManager,Family green;
    class Inquiries,Tours orange;
    class DailyLogs,Incidents red;

ポイント:

  • Residents(利用者): 要介護度、既往歴、服薬情報などの基本情報を集約。
  • DailyLogs(介護記録): タブレットやスマホで入力された日々の体温、血圧、食事量などが時系列で蓄積されます。

2. フェーズ別・課題解決シナリオ

フェーズ1:入居促進・見学対応(営業管理)

【課題】 空室があるのに埋まらない。見学に来た人がその後どうなっているか追えておらず、機会損失している。

★解決策:

  • 見学ステータス管理: 「見学済み」「検討中」「入居待ち」などのステータスを見える化。フォロー漏れを防ぎます。
  • Google Map連携: 顧客やケアマネ事業所の住所をクリックするだけでGoogle Mapが表示されます。スマホのナビ機能と連携すれば、訪問時の道迷いも解消し、スムーズな営業活動が可能になります。

フェーズ2:契約・アセスメント(ペーパーレス)

【課題】 入居時に大量の書類(重要事項説明書、契約書、個人情報同意書など)を作成し、ご家族に何度も住所を書いてもらうのが負担。

★解決策:

  • ワンクリック帳票作成: 利用者情報を一度入力すれば、PDF Makerですべての必要書類を一括出力。
  • タブレット署名: ブラウザ上の署名パッド機能を使えば、その場でタブレット画面にサインをもらって契約完了。紙の保管場所も不要になります。

フェーズ3:日々のケア記録(モバイル入力)

【課題】 職員がメモをポケットに入れて業務し、夕方にナースステーションで行列を作ってPC入力。これが残業の元凶。

★解決策:

  • スマホでバイタル入力: VTExpertsの「Mobile App」機能により、スマホブラウザでもPCと同様の操作性を実現。居室で検温したら、その場で入力できます。「37.5度以上」などの異常値が入力された場合、自動メール通知で看護師に知らせることも可能です。
  • 音声入力: スマホ標準の音声入力機能を使えば、「昼食、全量摂取しました。ご機嫌良好です」と話すだけで記録完了。キーボード入力が苦手な年配スタッフでも簡単です。

フェーズ4:ご家族・ケアマネ報告(信頼獲得)

【課題】 「離れて暮らす親の様子を知りたい」というご家族への連絡が、トラブルがあった時だけになりがち。

★解決策:

  • 写真付き定期報告: レクリエーション中の笑顔の写真などをスマホで撮影・アップロードしておき、月末に「〇〇様の今月のご様子」としてPDFレポートを自動生成・メール送信。ご家族の安心感が違います。
  • ケアマネ報告連携: ケアマネジャーが必要とする「サービス利用実績」や「モニタリング情報」もシステムからワンクリックで出力・FAX送信(またはメール)できます。

【業務フロー】バイタルチェックから異常報告まで

sequenceDiagram
    participant Staff as 介護スタッフ
    participant Mobile as スマホ画面(ブラウザ)
    participant Nurse as 看護師
    participant Family as ご家族

    Note over Staff: 居室巡回・バイタル測定
    Staff->>Mobile: ブラウザ画面で体温・SPO2を入力
    
    Note over Mobile: 異常値を検知(ワークフロー)
    Mobile-->>Nurse: 【メール通知】〇〇様 発熱検知
    
    Nurse->>Staff: 指示出し(クーリング等)
    Nurse->>Mobile: 処置内容・経過を追記
    
    Mobile->>Mobile: 日誌データとして保存
    
    Note over Nurse: 夕方の報告業務
    Nurse->>Mobile: 「ご家族報告」ボタン押下
    Mobile->>Family: 体調変化と対応内容をメール送信

3. 導入によるBefore/After

「記録のための介護」から「人のための介護」へ。現場の空気が変わります。

業務プロセス導入前 (紙・手書き・電話)導入後 (モバイル・自動連携)
バイタル記録手書きメモ→PC転記で二度手間スマホブラウザでその場で入力完了
申し送りノートを回覧・読み合わせで時間ロススマホで確認・重要事項はハイライト表示
家族連絡電話が繋がらず何度も架電写真付きレポートをメール/LINE送信
ヒヤリハット報告書を書くのが手間で隠蔽リスク音声入力で即座に共有・対策へ繋げる
入居営業ケアマネからの紹介待ちGoogleMap連携でスムーズなケアマネ訪問

4. 最後に

介護業界の人手不足は深刻ですが、デジタルツールを使うことで**「直接ケア以外の時間」は大幅に削減**できます。

VtigerCRMで記録業務を効率化し、空いた時間で利用者様の手を握り、話に耳を傾ける。

そんな「温かい介護」を実現するためのIT基盤として、低コストで導入できるオープンソースCRMをぜひご活用ください。